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脳内革命

ベストセラー小説『脳内革命』を読んだ。 現職の医師が書いたものとしては仮設に満ち過ぎているきらいはあるが、心の仕組みを見事に体系化している。 色々な解釈があるだろうが、私はあの本が訴えたいことを以下の様に捉えた。

我々の脳は大きく分けて三つの層から形成されている。 大脳全体を覆っているかのように見える知性を司る大脳皮質。 その下にある情動を司る大脳辺縁系。更にその下にある生命そのものを司る脳幹。 この脳幹の部分にあるA10と名付けられた神経が人間の快楽に大きく関係している。 この神経は食欲中枢や性欲中枢などの多くの中枢を経由して大脳皮質の前頭葉にまで達している。 この神経がそれぞれの中枢で興奮すると、脳内モルヒネが出て人はそれぞれの中枢に応じた快楽を感ずる事が出来る。 すなわち性欲中枢で興奮すると性の喜びを、食欲中枢では食の喜びを感ずるという訳である。 但し、どの中枢でも興奮が過ぎるとギャバというホルモンが働いて、その喜びを抑制するが、1ヵ所だけ、 その抑制が働かない中枢がある。ここで、A10神経が興奮すると、人は歓びっぱなしと言う状態になる。 その中枢とは前頭葉である。進化的に最も遅く発達し、意欲など人間性を司ると言われている前頭葉は、また自己実現を目指す中枢でもある。

これは何を意味しているだろうか? この本の著者はその事をここでこう説明する。 (それは、造物主が人間に自己実現を目指す生き方をしなさい、と示唆しているように見える。 そして、その生き方をした人に褒美として際限のない深い喜びを与えているのではないだろうか。) そして、心理学者マズロー博士の生存の欲求に始まって自己実現に終わる人間成長の5段階欲求説を取り上げてこの主張を補強している。 その他に、彼は健康になるためにと称して以下の様に説く。 健康になるために4つの事をあげている。 (1)ウオーキング (2)正しい食事 (3)瞑想 (4)前向きの生き方である。 そして、この前向きの生き方については積極的な考え方それ自体が良いホルモンの分泌につながり喜びや自然治癒力を増すのだと科学的手法で説明している。 彼がこの本で主張したことは、部分的には既に色々な本で述べられていた事ではあるが、それらを体系化し分かりやすく説明したことに、この本の意義がある。 是非一読を薦めたい。

渕辺俊一著