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嫉妬心

嫉妬心ほどやっかいなものはない。 (隣に家が建てば、私は腹が建つ。)という他人の成功を嫉妬する心は、(隣の不幸は密の味)という他人の不幸を喜ぶ心理に通じる。 だから、嫉妬心は劣情なのである。 我々は、仕事仲間に(景気はどうですか?)と聞かれて(はい、最高に調子が良いですね。おかげで、今期から当社は無借金経営になります。我が世の春到来という気分ですね。ワッハッハ) などとは、例えそれが事実であっても、決して言うものではない。 その言葉が、相手の笑顔を嫉妬心で歪め、思わぬ災いを招きかねない事を知っているからである。 だから、人に会う度に(貧乏暇なしで大変ですよ。良い話はいつも他人の話で、私の話でないのが残念です。)とか、 ちょつとオドケテ(私の最大の弱点をあなたに教えましょう。それは自慢ではないが、金がないことです。)とか言って相手を喜ばすのである。 聞く方も、そんな事はないと思いながら、つい可愛い奴と思ったりするのである。

このへりくだる言動は、ほとんどマナ-の域に達している。 嫉妬が劣情である事は誰でも知っているから、嫉妬心を理由に人の足を引っ張ったり攻撃しかけたりする人はいない。 嫉妬に駆られた人は、その抑えがたいエネルギ-の放出に正義の口実を必死で探す。 その大義名分を探す行為はほとんど無意識レベルでも行われるから、攻撃している本人が、その本当の理由が相手への嫉妬である事に気づかない事すらある。

これは日本の税制にも言えないだろうか。平等社会の実現を大義名分に、高額所得者に世界でも名高い罰金とも言うべき高率の税金を課してきた税制に 金持ちへの嫉妬を見るのは言い過ぎであろうか。サッチャ-首相の(金持ちを貧乏人にしたからといって、貧乏人が金持ちになる訳ではない。ますます貧乏になるだけだ。) という言葉を待つまでもなく、リスクにチャレンジし果敢に未知の分野に飛び込む企業家マインドを持った人々の意気を阻喪する様な税制が、国家のためになる筈がない。 ましてや、誰もが公務員になりたがり、基地の従業員募集に、安定を理由に若者が殺到する沖縄の現状では、尚更である。 誰が彼らの給与の原資を稼ぐのだ。米国の有名大学の卒業生がビジネスで自立する事を目指し、日本のそれが、官僚を目指すという志向の違いも、 その大きな理由の一つに税制があるかも知れない。

面白い話を聞いた。ヨ-ロッパのある会社で、1億の年収を稼ぐ、極め付き優秀なスタッフが他社に引き抜かれた。 すると、彼の後を追うように、その会社の従業員がどんどん会社を辞め始めたという。 何故、引き抜かれた訳でもないのに、他の社員まで辞めたのか。理由はこうである。 (1億の年収の優秀な彼は、会社に10億以上の利益をもたらしていました。私達は彼を支えました。しかし、その彼がいなくなった以上、もう会社には9億の収入は入らない。私達も支える人がいない。この会社の収益が落ち、私達の待遇も落ちるのは目に見えているから辞めたのです。) この論理は、先のサッチャ-の名言をまさに実証している。 日本では、1億の給与をもらう優秀な彼をスタッフは許すだろうか、同僚が例え許したとしても国家の税制が許さないだろう。 彼は外国への移住を夢見るはずである。嫉妬心の克服が国家的課題たる所以である。

渕辺俊一著