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その1

年を取るという事は真面目になることだ。いや、真面目を余儀なくされる事だ。

人間はほっておけば真面目に追い込まれる。 暴飲暴食は胃が受け付けない。鍋を囲んでも自ずと控えめで、若者に謙譲の美徳を施す事になる。夜になれば睡魔が襲う。 夜遊びしなくなる。朝は勝手に早起きで、することがない。だからつい1人で掃除などして陰徳を積むことになる。 記憶力の衰えは如何ともし難く、ついメモ魔になって、几帳面な印象を与える。アチラの衰えも哀れな程で、自ずと品行方正になる。

人はほめても、これでは駄目だ。駄目なのは自分が一番知っている。 だって、ちっとも楽しくないんだもの。仕事は奪われ、友人知人の逝去に接する機会も多くなる。寂しい。 寂しいから妻にまとわりつく。掃いても掃いてもくっついて来る濡れ落ち葉男。妻が出かけようとするとワシもワシも行くと駄々をこねるワシ男。 妻に死なれりゃ一巻の終わり。程なく後追う愛妻物語。人生こんなにも情けないものか。こんなざまで長生きして何になる。 どうせ一度はあの世とやらだ。茫然自失の100年より、ドキドキハラハラ夜這いのごとき1年が勝るのだ。よし! ここで一念奮発して世の中に何か引っ掻き傷を残して果てようと、不良男に変身することに決めた! でも....さて何をするか....?!

渕辺俊一著