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私の宗教論

私の見解では宗教には2つの共通点がある。一つはどの宗教にも救済されたと言う人々が存在する事。 救済の大半は病の治癒であり人間関係の悩み等の解消である。 もう一つは読経や聖典の音読の旋律やリズムがどの宗教もほぼ似通っている事である。 私はこの2番目の旋律やリズムに宗教の秘密を解く一つの鍵があると思う。 パブロフの創始した条件反射学の理論によると、動物は(人間も含めて)一定の反復刺激を繰り返すと、 その刺激に対応する脳細胞の破壊を免れる為に超限制止という抑制を開始し、それが全体に広がり、ほっておくと、やがて睡眠に至るという。 宗教はこの原理を応用する。

例えば、木魚を一定のリズムで叩く。叩くと超限制止の原理で眠たくなる。 しかし、眠っては宗教にならない。だから木魚は瞼のない魚なのだ。覚醒から睡眠に至る過程の中に瞑想ゾーンがある。 そこに意識を持ってくると恐らく、人の脳はベータエンドロフィン等の脳内麻薬物質を出し始めるのであろう? そして、それが引き金となって、体内の各所にあるリンパ球は活性化してバクテリアやウイルスを殺すからそうした疾患の病は治癒しやすくなるという訳だ。 治癒すれば信者は自分の体が勝手に治したとは思わない。 当然、自分の信仰している神が治したと誰でも思うから感謝感激して、熱烈な信者になるという訳である。こういう風に考えたら宗教はわかりやすい。

そこで、割り切って最も効果的な宗教を構築する事も出来るだろう。 最も、リンバ球が活性化したり、脳内麻薬物質が噴出しやすい環境を人工的に創造し、それに巧妙に導く方法である。 最近急速に発達してきているバーチャルリアリティーや遠隔制御技術を組み合わせて応用すると非常に強力な宗教が誕生する可能性がある。 オウム真理教にこれをやられる前に彼らは力を失ったが、やがて、こうした原理を利用した、もっと強力な宗教が現れるだろう。

私は3年前、故あって、大日本印刷のバーチャルリアリティーの研究室を訪ねて、その可能性を論じた事があった。 その話の中で、このシステムは宗教に取り入られたら大変な効果を及ぼすのではないですかと聞いたのに対して、 大日本の研究員がニッコリした後(実は既に引き合いがあったのですよ)と答えたのに吃驚した事がある。 その宗教がオウムだったかどうか当時知るよしもなかったが、いずれにしろ、未来の宗教の中にはこうした人間に 備わっている治癒や快楽のシステムを最大限に引き出す科学的手法を取り込んだものが出現すると思う。

渕辺俊一著