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会長は超能力者

金城氏(62歳)は沖縄生まれなのに夏に弱い。今年も避暑の為2ヶ月程カナダへと旅立った。

金城氏の仕事は製菓業であるが、会社を休む事で仕事が滞る心配は全くない。 昼間目一杯ハンティングやフィッシングを楽しんで、夕方バンガローに帰って一風呂浴びると、コンピュータの前に座って一仕事だ。 まず仮想現実感通信システムを活用して、日本にある昼間の会社の状況を、まるで現場に居るような感覚で完全に把握する。 その上で翌日の仕事の段取りをする。金城氏の菓子職人としての40年の技術を蓄えたオンラインデータベースを内蔵した自律移動型ロボットに、 翌日の生産品目と生産量をインプットすると、指示通りに生産が行われるという訳だ。

事務決済は、会社に備え付けてある実印やサインなどを装填あるいはプログラムした遠隔決済処理装置(仮称)を活用する。 つまり、決済装置に事務員がセットした決済資料をパソコン通信の原理を使用して、手元のディスプレイに写した上で、画面の右隅に羅列して表示される アニメ状の印鑑をマウスで引っ張って決済資料に押すと、そのシュミレーション通りに決済処理装置が稼動して手形や小切手、あるいは契約書に捺印するという仕組みになっている。 もちろん決済の時間を指示する事も自在であるから、一晩寝て考えが変われば決済を取り消す事も自由である。

こうしたシステムもB-ISDNなどネットワーク網の充実が、その実現を速めるだろう。 そうなれば決済の為に会社を空けられないという事もなくなり、また支店や子会社に出向くこと無しに決済出来る様になる。 たとえ病室からでも病状次第では経営は可能になる。これが経営者のライフスタイルに影響を与えない筈がない。 この様にコンピュータネットワークの充実は、単に電話やファックス及び現在のパソコンの通信の様に文字や図形情報を単にやりとりするだけでなく、 その情報がネットワークを通じて遠隔地にある機械やロボットを自在に動かすというパターンを日常の事とするだろう。 もちろん、コンピュータネットワークの恩恵は、先にもあげた様にビジネスばかりでない。日常生活の隅々にまで及んで我々の価値観や、ものの考え方に大きな影響を与えると思われる。

渕辺俊一著