ホーム名誉会長コラム > 戊辰戦争秘話

戊辰戦争秘話

江戸末期、戊辰戦争で藩長軍が東北の庄内藩(山形県)を攻め落としたときの事。
薩摩の大将黒田清隆は庄内藩士の武装解除を急ぎ、銃や大砲は言うに及ばず刀も取り上げ文字通り丸腰にしようとした。ところが、その様子を見た藩長の総大将西郷隆盛が清隆に意外なことを言った。(清隆どん、刀ぐらい差しても良かとじゃごわはんか?)目を丸くした清隆は(先生、この連中は今まで戦ったどの敵より手強い。帯刀を許せば、どんな抵抗におよぶかわかりません。)と反対を強く主張した。
そこで西郷は言った。(良か、良か、抵抗したら又打てば良か。)西郷はその後行われた降伏調印式でも庄内藩主に帯刀を許し、上座に据えている。この戦争で実の弟まで失った西郷の、これらの行為を庄内藩の藩達はどうみたのだろう。江戸が明治になった後、この戦いに参加した元藩士が話している。(私達は刀を差していても良いと言われた時、心底負けたと思った。そして、西郷という人柄に感服した。) その後、庄内藩の藩士達は西郷が鹿児島に建てた私学校に大挙入門する。
当時、西郷について書かれた唯一の本と言われる西郷南州翁遺訓は、その庄内藩士が編纂したものである。

その後、興る西南戦争にも庄内藩の藩士達は東北から西郷の元に駆けつける。桜島を見下ろす南州墓地には、西郷南州と共に、そうした藩士達が眠っている。

渕辺俊一著